【夏樹side】

昨日、冬菜に手紙を渡した。
時は無情にも過ぎていくばかりで、季節は俺の心も置き去りに変わっていこうとする。

こうして離れている間にも冬菜が遠ざかってしまいそうで、とにかく必死だった。

あの手紙を、冬菜が読んでくれたかはわからない。

わかってる、なにかせずにはいられなかった、俺の自己満足だ。

俺は今日も昼休みになった途端、教室を出て行ってしまった冬菜の席をぼんやりと見つめてしまう。

「ねぇねぇ佐伯、うちらとご飯たべよーよ」

クラスの男子たちからも人気のある女子たちを、まるで自分の飾りのように侍らせた園崎が、俺に声をかけてくる。

俺からしたら、うるさいわ、香水キツイわで、微塵も惹かれない。

俺が心惹かれるのはたったひとり、冬菜だけだ。

「断る」

俺はそれだけ言い放って、いつものように誠と琴子と一緒に昼飯を食べる。