春が来たら、桜の花びら降らせてね


「俺には冬菜ちゃんたちにどんな過去があったのかはわからないけどさ」

不意に、琉生君がポツリと本題に触れる。
私は食べる手を止めて、静かに琉生君の話に耳を傾けた。

「ただ、あの時こうしてればって、後悔しないでほしい」

琉生君の声は低くて、静かで、心が落ち着く、不思議な効果があった。

だから私は、琉生君の言葉を穏やかな気持ちで受け止められている。

「人は限られた時間しか生きられないんだ。だから、精一杯、思うままに生きた方が、得だぞ」

「…………」

思うままに……生きられるのなら、そうしたい。
だけど、夏樹君と一緒にいても、きっと苦しくて悲しいだけだと思う。

私は夏樹君の過去の傷であり、夏樹君にとっても私は過去の傷なのだ。

出来れば見たくも無い、触れたくもないモノなのに、夏樹君はどうしてそこまでして、私に関わろうとするのだろう。