春が来たら、桜の花びら降らせてね


「冬菜ちゃん、お昼一緒に食べないか?」

だけど、返ってきたのはお昼のお誘いで、欲しい返事ではなかった。



琉生君に連れてこられたのは、夏樹君との思い出が詰まった、裏庭のビオトープだった。

私は琉生君と木陰のベンチに座り、特に会話もなくごはんを食べる。

食欲はなかったが、他にすることもないので、お弁当箱からご飯をただ口に運ぶという、ベルトコンベア的な感覚で無心に食事をした。

そんな私の隣では、琉生君が綺麗な所作でサンドイッチを食べていた。

沈黙の時間の方が多かったけれど、琉生君は時々。

「あ、この辺カワセミが鳴いてるんだな。カワセミって、あの翡翠色の体に、赤い口紅ひいたみたいな鳥なんだけど、見える?」

ピーピーと鳴くカワセミの話をしてくれたり。

「あの紅白の中に黒の斑点がある鯉がいるだろう?あれ大正三色(たいしょうさんけ)っていって、大正時代に誕生したらしい」

ビオトープの中を泳ぐ鯉が水面を揺らせば、そんな鯉の豆知識を話してくれたりした。

その時感じたものを話してくれてるから、話さなきゃと焦ることも無く、沈黙も居心地が良かった。