春が来たら、桜の花びら降らせてね


「ごめん、無理やりするつもりじゃ……」

「っう……!」

もう一度伸ばされた手に、緊張が最高潮に達した私は、夏樹君から逃げるように駆け出した。

誰もいない場所を探して、自然と足が向いたのは裏庭だった。

「冬菜!」

「はぁっ…は…っ!」

全速力で逃げたのに、裏庭の入口で夏樹君に追いつかれてしまう。

後ろから腕を掴まれた私は、成すすべなく立ち止まった。

それでも、どんな顔をすればいいのか、何を言えばいいのかわからず、振り返れない。

「冬菜、俺……話がしたいだけなんだ」

「……っう……っ」

何か、言わなきゃ……。
そう思って口を開いたのに、出たのは小さな呻きだけ。

あれ、ここは私と夏樹君しかいない、なのにどうして話せないのだろう。