「じゃあさ、王子様は佐伯ね」

園崎さんの言葉に、クラスの女子が「絶対似合う!」、「佐伯くんカッコいいもんね」と賛同する。

みんなの視線が同意を求めるよう夏樹君に集まる。

夏樹君は無表情に「断る」とそれだけ言って、腕組みをしながら目を閉じてしまった。

「佐伯ノリ悪いじゃん、どーしたの?」

「気が乗らねーの、他のヤツにしろよ」

夏樹君は顔をのぞき込む園崎さんに、冷たく言い放った。

あんなに笑顔溢れる人だったのに……。
どんどん壊れていく、私のせいで。

見ているのが苦しくなった私は、夏樹君から目をそらした。

「つまんなーい!でも、みんなは期待してると思うけどな?」

園崎さんが不敵に笑って、クラスのみんなをチラッと見る。

すると、クラスのみんなは「そうだよ、夏樹しかいねーよ!」「佐伯くんの王子様姿みたーいっ」と騒ぎ立てる。

それを、気持ち悪いと思った。
みんな、心と言葉が一致してないからだ。

女子たちは園崎さんが迷わずシンデレラに選ばれたことを良くは思っていないし、男子は自分が選ばれなくてムカつくって嫉妬の顔をしている。

なのに笑顔を張り付けて、わざとらしく同意するのだ。

みんなが道化師のように見えた。