『ねぇ~、なんか言いなよ、原田地蔵』

『…………』

男の子に便乗したのは、クラスの中心にいる目立ちがりやの女の子だ。

『原田地蔵』というのは、喋らない無表情な私が、地蔵みたいだからという理由でその男の子につけられたあだ名だ。

みんなは私を理由に笑いを作り、話題を作り、居場所を作る。

だから、私はいつも一人だった。

『原田地蔵、なんか泣きそうじゃね?』

男の子は、私の顔をのぞき込んで鼻で笑う。

『…………』

やめて、泣くところなんて見られたくないっ。
こんな私にだって、意地がある。

──ガタンッ。

私は勢いよく席を立った。
そのまま、逃げるように教室を飛び出す。