「…………」
私が普通じゃないばっかりに、大切な人を傷つける。
ごめんね、琴子ちゃん、誠君。
なら、私がいなければいいんだ。
小学生の時のように、静かにひっそりと透明な存在になる。
何を言われても傷ついた顔をしない、反応しないでいると、いつの間にか空気になれるから。
すると、おのずとみんなから忘れられていく。
そうするべきだったんだ、初めから。
その答えにたどり着いた私は、カタンッと静かな音を立てて立ち上がった。
全員の視線が、私に集まる。
「冬菜?」
夏樹君に名前を呼ばれたけど、それすらも無視をして、スクールバックを手に教室の出口へと歩き出した。
そういえば、こんなこと前にもあったなと、どこか他人事のように思い出した。
小学6年生の12月。
そう、あの冬の寒さが心まで凍り付かせたあの日。
泣くところを見られたくなかった私は、教室で『原田地蔵』とからかわれ、耐えきれず教室を飛び出したんだ。
そして今も、私は教室を出て廊下を歩いている。
あの日と違うのは、廊下を走りながら泣いてないこと。
悔しくて、どうして私なんだろうって何度も嘆いていないことだ。
今の私は、涙さえ流れない。
悲しいはずなのに……どうしてなんだろうと思う。
全てが、どうでもよくなってしまっていたからかもしれない。
あの日を思い出すように、ふと、廊下の真ん中で立ち止まる。
授業開始が近いせいか、生徒はみんな教室に入り、廊下は人気が無く静かだった。
この後は確か……そう、君が追いかけてきたんだ。


