「っう……む!」
頬、頬触られた……!
心臓が破裂して、体がさらさらと砂のように消え去りそうなくらい、夏樹君の前にいることが耐えられなかった。
「嘘つくな、何かあったんだろ。俺には話せないことかよ?」
まさか、君のことで悩んでますだなんて、絶対に話せない。
君が好きだから、意識しすぎてしまうだなんて、死んでも言えないから、墓場まで持っていくことにする。
「そりゃあ、夏樹には話せないでしょ」
「あ?」
私の心の声を代弁したのは、誠君だった。
「あったりまえじゃーん!夏樹ってばニブニブ星人だねぇ」
誠君の腕に抱き着いている琴子ちゃんが、呆れたように言う。
「は?なんでだよ」
「そんなの自分で考えなさい、ニブニブ星人」
「誠まで……やめろよ、そのあだ名!」
誠君まで便乗しちゃってる……。
琴子ちゃんが一度呼んだあだ名は、しばらくそれで定着するんだろうなと、私は苦笑いする。
現に私もこの間、冬菜ちゃんからふゆにゃんにあだ名が変わって、現在進行形で今も呼ばれているから。
新しいあだ名ができるか、飽きるかのどちらかで、夏樹君の運命は決まってしまうのだ。