「じゃあ、行こうか」

「っ……!」

この人、強引だ。
私の返事なんて待ってない、どうしよう!

何もできずに、男性に手を掴まれそうになったその時だ。

「冬菜!」

「あっ」

そこへ、ゴールデンレトリバーを連れた夏樹君が現れた。

私の所へやってくると、男性から引き離すように、夏樹君は私の腰を抱いて引き寄せる。

夏樹君……!?
その行動に、触れる体温の熱さに、心臓が破裂しそうになった。

いけない、夏樹君はただ私を助けようとしてくれているだけだ。

なのに私、場違いにもときめいてしまった。

「待たせて悪いな、つーわけで、彼女がお世話になりました」

「なんだよ……男待ちなら、そう言えよな」

そう言って、男性はそそくさと去っていく。
夏樹君、今彼女って……私を守るために嘘をついてくれたんだ。

その優しさに嬉しさと切なさを同時に胸の内に抱きながら、私は夏樹君に曖昧に微笑む。