「冬菜のために、花咲か夏樹が桜を咲かせましょう」
なんなんだろう、これは。
いや、咲かせたっていうか……降らせた?
って、そんなことはどうでもいいや。
それよりもなんで、桜の花びらを私に?
新手のいじめかと思う反面、そうじゃない気もする。だって夏樹君は、入学おめでとうって言ったんだ。
「俺からのプレゼント、朝から拾い集めてたんだぜ」
目を見開く私に、夏樹君はニッと笑って桜の花びらがいっぱいに詰まった袋を持ち上げて見せてくる。
朝から、私のために……?
この人は、一体誰?
心の中に、警報が鳴り響く。
知りたいという欲求を、持っては駄目だと誰かが私を引き留めようとしているみたいに。
「その顔、なんでって顔だな」
「…………」
何も言ってない。
表情も悟られないくらいには、無表情のはずだった。


