茜と露李が動きを止める。
声の方向には紅薔薇の少女、ロゼだった。
「…貴女は関係ありません。これは私と秋篠 茜の問題です」
瞬時に無感情な声と顔に戻ってしまった“神”を、ロゼは真っ直ぐに睨みつけた。
「アカネさんを、殺さないで」
強い表情の割に、ロゼの目には涙が溜まっていた。
“神”が目を細める。
怖いのだろうということはロゼを見ればすぐに分かった。
「ロゼッ」
シルヴェスタがロゼの後ろから現れ、彼女を背後から抱き締めた。
神の顔が辛そうに歪む。
「──何だか分からないが、アカネも承知の上なんだな?」
「賢い方ですわね、貴方は相変わらず。ええ、勿論ですわ」
まるでいつもの別れ際のように艶やかに笑うアカネ。
「私は、まだアカネさんと話したい」
ロゼの掠れた声に、彼女はよりいっそう笑みを深める。
「ごめんなさい。貴女たちが幸せになるのなら、私も幸せになりたいの」
「どういうこと、ですか」
「私が話していた知人。あれ、この子のことなんですの。この子に終わらせて頂くことが、私にとっての幸せなんですわ」
訳が分からなかった。
ロゼの頭が理解することを恐れていた。
あの少女が手にしている刃物で切られてしまえば二度と会えないのだ。
自分に優しくしてくれた女性に。
もう、二度と。
それなのに、彼女はそれを幸せだと言う。
それは、アカネに対する冒涜なのだろうか。
「ごめんなさい…」
ひっそりと声をあげたのは、“神”だった。
ゆっくりと刃物を上に振り上げる。


