【短編】生け贄と愛

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「きゃー!最高ですわー!」


嬉しげなアカネにロゼは困り笑顔で応じた。

締め付けられたお腹が苦しいし、やはり慣れない。

ロゼの首周りはきちっと締められているが、アカネは肩まで下がっている。

そちらの方が余程、着心地は良さそうなのだ。

しかしその格好もアカネのようなグラマラスな体型ならまだしも、自分は…と溜め息もつきたくなる。


ロゼが今着ているのは振り袖と言うらしく、ごくごく薄い藤色に、濃い灰色と濃い紫で花の模様が施されたものだ。

帯はまた一段と濃い紫。

綺麗に横を編んでからハーフアップにした髪は後ろで濃い紺色で留めてある。


「ほら、見てくださいな!ルリ、鏡を!」


アカネに言われるなりルリの持ってきた鏡を覗き込むと、淑やかな女性が映っていた。

自分だなんて信じられない。


「アカネさんすごい…」


「そんなことありませんわ」


襟を直してくれながら、アカネはふと寂しそうな表情を浮かべた。


「…ロゼさんは、私の知人に似ているのですわ」


「え?」


「重ねているようで申し訳ありませんが、その髪もその知人がしている髪型でしたの」


突然の告白に戸惑う。

どう返していいかも分からなかった。


「強くて、でも儚い…矛盾しているような子でしたわ」


懐かしむように、アカネは目を細める。

彼女の目に、自分はどう映っているのか。

ロゼはそっと見つめ返す。


そうして束の間、ロゼは着物を一式もらってシルヴェスタの所へ返されたのだった。