男は待ってなさい、というアカネに渋々従うシルヴェスタを置いてロゼは隣の部屋に通された。
ここもさきほどまで居た部屋とそう変わらない装飾だったが、彼女には珍しくて仕方がない。
南側の部屋全てが庭に通じている家など見たことがなかった。
靴を脱ぐ習慣も初めてだ。
アカネが来るまでどうすることもできずに突っ立ったままではあったが、退屈することもなく待っていた。
大きく息を吸う。
シルヴェスタの屋敷は微かに甘い薔薇の香りがしていたが、ここは違う。
爽やかで香ばしい草の香りがする。
自然の香りだ、とロゼは嬉しくなって目を細めた。
「このお部屋が気に入りまして?」
いつの間にやら立っていたアカネの声にハッとする。
「敷物…と言った感じではありますが、これはタタミと言いますのよ」
「タタミ」
「ええ。夏は涼しく、冬は暖かいんですの」
ゆっくりと説明を終えると、アカネは下を指差した。
広い部屋の奥の方には様々な色の布が沢山置いてあり、右側には堅い細めの生地、左側には鏡台と髪留めなどが据え付けられていた。
「まずは薄桃から試してみましょうか。まずそのお召し物をお脱ぎになって。ルリに渡しておきますわ」
ロゼはされるがままに頷くのだった。


