【短編】生け贄と愛



「好きだ!!」


掴んだ反射のように放たれた言葉に、ロゼは目を見開いた。

揺れる瞳で見つめられていることにも気がつかず、シルヴェスタは少し俯く。


「愛して、る……」


掠れた音が静寂に雫のように落ちた。

一つ一つが重い音を含んでこぼれた。


ロゼの目はこれでもかというほど見開かれ、シルヴェスタを映していた。


──好き?


熱いものが頬を伝っていることにも気づかずに彼女は涙を流した。

かけられたことのない言葉だった。

胸が甘く痛んで、それでもロゼの目は彼を映し続けた。


「すまない、アカネ」


シルヴェスタは真っ直ぐにアカネに向き直った。

しかし、アカネは頷いたまま肩を震わせているだけだった。

シルヴェスタも何も言わなかった。

彼にはアカネを慰めるための腕がない。

アカネにかける言葉もない。

あるとすれば謝罪だけだった。


彼女の長い黒髪がふわりと揺れ──真っ赤な唇が、弧を描いた。


「シルヴェスタ、早く仰ってくださらないと」




彼女は、笑っていた。