「おい、アカネ。これはどういうことだ」
女に目を戻したシルヴェスタの声には今度は激しい怒りがこめられていた。
アメジストが暗く染まる。
「ロゼを傷つける輩に容赦はしない」
「あら、その怪我も牙痕も…シルヴェスタ、貴方ではなくて?」
艶かしい笑み。
一方シルヴェスタは言葉に詰まる。
「もう…何にも傷つけさせない。俺も例外じゃない」
「綺麗事ですわね」
「何とでも言え。それより、お前。ここで何をしている?」
「見ての通り、決闘ですわ。負けるつもりはありませんでしたが、どうしてこの娘を贔屓なさるのか知りたいでしょう」
「なぜお前がそんなことを気にする。俺の力などお前には無価値だろう」
「まあ……鈍感ですこと。以前に申し上げたはずですわよ、『あたくしは貴方が好きだ』ということを」
「は?」
目を点にさせるシルヴェスタに、アカネと呼ばれた女は妖しく笑った。
女の顔はシルヴェスタの背中で隠れて窺えないが、ロゼは彼が戸惑っているのを読み取っていた。
「あたくしは貴方がこんなにも…好きなのに!!」
また突如としてアカネがシルヴェスタに鉄扇を向ける。
シルヴェスタはロゼを抱いて飛び退き、彼女をベッドに寝かせた。
「シルヴェスタ」
「大丈夫だ」
ロゼの呼び声に優しく笑いかけ、アカネの攻撃を払いのける。
「ずいぶん気持ちが通じ合っているようではありませんか。その……小娘を、渡しなさい!!」
「やめろアカネ!」
「貴方は全てにおいて中途半端なのですシルヴェスタ!!」
八つ当たりだが的を射た言葉にまたシルヴェスタは奥歯を噛んだ。
「せめてこの娘をどう想っているか、言葉にしたらどうなんですの!貴方があたくしを、どう想っているかも!」
悲鳴のようなアカネの声。
何故だか聞いていられなくて、ロゼは静かに瞼を固く閉じた。
本当は耳も塞いでしまいたかった。
アカネが懐から短刀を取り出してシルヴェスタに投げつける。
しかしそれが当たることはなく、彼の手が掴んで止めた。


