【短編】生け贄と愛

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 痛いというよりも、ロゼは熱いという感覚で目が覚めた。

左の腿の傷が熱を持ってしまっているらしい。

うう、と呻きながら身体を起こす。

ベッドの横にはサイドテーブルがあり、そこに水差しとグラスが置かれている。

こんなのあったっけ、と首を傾げてから、もっと重大なことに気がついた。

上品な装飾の、見慣れた部屋。

そこまで理解したところで、一気に記憶が押し寄せた。

衝撃的なものが多すぎて処理が追いつかない。

しかし、それでも一番色濃く思い出したのはアメジストの瞳を持つ吸血鬼──シルヴェスタだった。


ここにいるということは彼が運んでくれたのだろう。


そうして気を失うまでの記憶を順に追って──真っ赤になる。

私は何てことを言ったんだと今更ながら恥ずかしくなる。

彼がどう思っているのかも分からないのに何て無謀な。


「やだ…」


無意識に呟いた瞬間。


「ロゼッ!?」


けたたましい音を立ててドアが開いた。

焦った顔をして入ってきたのは紛れもなくシルヴェスタだった。

余裕の無い表情が物珍しいのと驚いたのとで、ロゼはまじまじと彼を見つめる。

ロゼの怪訝な様子に冷静さを取り戻したのか、コホンと咳をして近づいてくる。


「気がついたのか。痛むか、大丈夫か。三日三晩、気を失ったままうなされていたんだぞ」


「そうなんだ…」


間抜けな返事しか出来なかったが、それも致し方ない。


これは一体、どうしたことか。


焦った表情、飾り気の無い言葉。

そして何より。


「それ、何を持っているの」


ロゼは彼が持っているモノを凝視した。