何とか声が聞こえない所まで逃げたところで、少女──ロゼは溜め息をついた。


しばらく出歩けないだろうと髪をかきあげながら予想する。

紅薔薇のような真紅の髪、血のような赤い瞳。


ロゼの容姿は極めて異質だった。


物心がついたときには、彼女は教会で育てられていた。

神父は優しく接してくれた。

他の子供たちと平等にあろうとしてくれていた。


けれど、他の子と同じような愛情は抱けなかったようだった。

同じ孤児で、捨てられたというような境遇の子供たちと何ら変わらない。

姿形以外は。


ロゼが生まれ育った地域では、血は穢れの証だった。


しかしそれにも区別がある。


暮らしていく為の殺生で流れた血を扱う者。

例えば牛や豚、鶏などを捌く職人。


これは神聖ではないが、勇者として称えられるため身分が高い。

それ以外の血は不浄なものとして扱われた。


ロゼの容姿は、血のような赤がよく目立つ。


真っ白な肌に、大きな目、小さな唇と鼻。


美しい姿をしながら色は赤だ。


これを見た人々はいつも悪魔だと言った。


ロゼはそんな意味でも嫌われていた。


神父ですら笑みがぎこちなくなるほど、そのような文化が根付いていたのだ。