え?


橘?


今日なんか約束してましたっけ?



「さつきちゃんなら今着替えてるからもう下りてくると思うけど…」


香澄さんの状況説明に固まっていた体を動かし、最後のカーディガンを羽織り携帯をお尻のポケットに押し込む




下りていくと香澄さんと初めて見る知らない男の人が怖いのか香澄さんの脚にぎゅっとしがみついている健の後ろ姿と玄関に立っているデニムにロンTというラフな格好をした橘がいた



「橘、どうしたの?」


残りの数段を下りながら用件を聞く


「久しぶりに高校でも行こうと思って誘いに来た」


あぁ、そっか今日は平日だから高校は普通にやってるんだ


階段を下りきるとそれまで香澄さんにしがみついていた健が「だめー」と橘の方を向いて私と橘の間に立ちはだかる


怖いのに男として知らない人から守ろうとしてくれるその可愛い姿に思わず微笑む



「健、この人は友達だから大丈夫だよ。」


私の言葉に振り返った健に目線を合わすようにしゃがむ


「明日は朝ご飯いーっぱい食べて公園に行こうね」


「うん!」と嬉しそうに頷く健の頭を撫でて立ち上がり、下駄箱からスニーカーを取り出す



香澄さんと手を繋ぎ、橘を凝視する健




「健くん」


今度は橘が健の目線に合わせて身を屈める



「さつきのことは俺が守るからな」



そう言って微笑む橘の顔に「やくそく」と言って平手を食らわした健に思わず吹き出した


香澄さんは焦って「すいません」を繰り返した


靴を履いて、「いってきます」とドアを開ける


「いってらっしゃい」という声に送られて橘と共に外へ出る