距離が空くどころか、なくなったことにドキリとする


どう反応をしていいかすぐに思い浮かばず、ただ心の中で焦っているとすぐに電車は駅に付き橘の体は離れていった





一瞬なくなった距離に焦りはしたけど、それは不快なんかではなく、むしろ心地いいと感じるのは橘にパーソナルスペースへの侵入を許しているということ…よね



それが大也ではなく橘なのはどうしてか…


やっぱり過ごしてる時間の長さ?


大学では大也だけ学部が違って、会うのはお昼ご飯の時か全学部共通の科目か夜に飲む時くらいだったし、社会人になってからもラグビー部の練習やら試合やらで会社にいる時の昼休憩か飲みに行く時くらい


橘は大学でも会社でも基本的にずっと一緒に過ごしてきている


大也と2人で行動することは殆どないけど、橘と2人で行動することは当たり前になってる



いつの間に当たり前になったんだろう…





会社に着くとエレベーターは全部上に行ってしまっているらしく、エレベーターを待つ吉野さんの後ろ姿を発見した



「吉野さん、おはようございます。土曜日はありがとうございました。」


吉野さんに近付き、土曜日の礼を述べる


橘も「おはようございます」と挨拶をする



「おはよう。またいつでも来てね」


優しい微笑みで返される言葉にこちらも微笑む