駅から出る直前に左手の中に滑り込んできた冷たい手



誰の手か見なくたってわかるその主を振り返れば耳まで赤く染めて俯いていた




11年前に初めて触れた時と変わらない



冷たいその手をぎゅっと握り




愛しいその名を呼ぶ






「さつき」






顔を上げたさつきの手を引き寄せて




耳元に顔を寄せ囁いた







「好きだ」







ずっと言いたくても言えなかった言葉…