彼と私の優先順位

後ろめたいことは何にもないけれど。

仮、とは言え、今、慧と付き合っている状態で他の男性達とプライベートで食事に行くことは何だか気がひける。

……慧はきっとそんな私を責めたりはしないだろうけれど。



「先約だったんだろ?
気にしないで行ってこいよ。
……でも、浮気はすんなよ?」

明るい慧の声。

「し、しないよ!
そもそもそういう集まりじゃないしっ」

「わかってるよ、冗談。
遅くなるなら迎えに行くから」



一瞬で真剣な声音に変わる慧に。

私への心配が伝わってきて、小さく息を呑む。



「……うん」

「もう、家に着いた?」

「え?」

慧の声にきちんと周囲を見回すと、見知った自宅近くの風景が目に飛び込んできた。

「あ、うん、角を曲がったらマンション……」

「そっか」



慧の言葉に、私は思い当たる。

「……慧、もしかして私が自宅に着くまで話してくれてた?」

「まあね、俺の好きな人は結構おっちょこちょいだから、目が離せないし」

ついさっき聞いた話を繰り返す慧に。

私の胸がじんわりと熱くなる。

「……ありがとう」

「いや、結奈の声を俺が聞きたかったから。
……昨日会って話したこと、結奈が今日、後悔してないか心配だったし」