彼と私の優先順位


慧をからかうつもりで軽く聞いた筈だったのに。

いつもと違って優位に立ちたくて話した筈なのに。



ああ、やっぱり。

いつも最後には、慧にかなわない。

声だけなのに。

慧の声にさえ、ふんわりと抱きしめられているように感じる。

その甘い破壊力に真っ赤になって立ち止まる私を知ってか知らずか。



「……知ってた?」

アイスクリームすらとけてしまいそうな、甘い甘い声で私を翻弄する慧に。

今日もやっぱり私はかなわない。



「……し、知らなかったよ……」

精一杯の平然を装ってみても。

上ずった声はきっと慧にバレている。

その証拠に慧はクスッとひとつ甘い笑みをもらす。



「……わ、私、今度の金曜日参加できなくて!」

恥ずかしさを打ち消すように、悔しさを少し滲ませて私は話を変える。

「金曜日?」

「亜衣と奏くんと慧でご飯を食べるっていう……」

「ああ、そういえばそんな話してたな、奏と。
亜衣も来るんだ?
結奈は何か用事?」

尋ねる慧に。

「……同期会なの、ずっと誘われてて……ごめんね」

何で謝るの、と慧は苦笑する。