「言ってる意味はわかるけど……。
……でもそれって、誰か他の人と付き合うことになっても同じことじゃないの?
皆、別れを考えながら付き合う訳じゃないでしょ?
何でそんな回りくどい方法とるの?
……何かこじれていない?」

亜衣がアイスコーヒーの氷を納得がいかない、とばかりにストローでかき混ぜる。

透明な茶色の液体の中で氷はカラカラと涼しげな音をたてる。

こんな風に私の気持ちも透明ならいいのに。



「……自信、ないからかな……。
あと、もう傷付きたくないから?」

何で疑問形なのよ、と私を一睨みして、亜衣は話を続ける。

「……そんなの、皆、傷付いて泣いたりして付き合ってるんじゃないの?
自信満々で付き合っている人なんてそもそもいるの?
皆、何かしらあるんじゃないの?
私だって奏と数えきれないくらいケンカして泣いたよ?
恐がりすぎじゃない?
そんなこと言ってたら相手が誰でも付き合えなくない?」

「……うん」



私は曖昧に口角を上げて無理矢理、微笑む。

亜衣の言う通りだと思う。

私の言い分は身勝手だ。


だけど。



またもう一度。

あんな想いをしてしまったら。

もう私は立ち直れないような気がして。

とても恐い。



どうしてもどうしても。

素直に飛び込めない。

自分を守るために。

逃げ道がほしい。



私には。

慧のような強さはない。



そんな私の様子を心配そうに窺いながら、亜衣が明るく話題を変えた。

「……あ、そうそう。
来週金曜日の夜に慧と奏とご飯食べようって話をしてるんだけど、結奈来るでしょ?」

「来週金曜日?」