「……慧、私……!」

驚く私の言葉を遮って。

「……却下、反論はきかない。
……二ヶ月付き合って。
それから返事をして」



一方的すぎる会話。

有無を言わせない強い口調の慧。

なのに。

それとは裏腹に懇願するように私を見つめて、私の手に指を優しく絡める慧。



「……無茶を言っているってわかってる。
でもそれでもどうしても。
結奈を諦めたくないんだ……」

切なさを滲ませる慧の声に。

どうしようもなく心を乱されて。



「わかった……」

流されるように返事をした。

「やった!」

極上の笑顔を見せる慧。

その笑顔はあの頃と変わらない。



「二ヶ月後には結奈に好きだって言ってもらえるように努力するし、結奈を大切にするから」

慧の言葉に。

私の本当の気持ちを伝えなければ、と思った。

このままじゃ。

私の気持ちは行き場がない。



「あの、慧、私……」

話そうとすると、何か察したのか、慧は小さく首を横に振る。

「……俺、二ヶ月後にもう一回、結奈に告白するから。
その時に結奈の気持ちを聞かせて」

自分に言い聞かせるように話す慧に、私は何も言えなくなる。

数年経っても肝心な話をできない自分に自己嫌悪と。

もう二度と傍にいることが叶わないと思っていた慧の傍に束の間でも、いれるのだという喜び。

それがとても脆いもので、儚いものだとわかっていても。