「やった!
ありがとう、結奈っ。
柘植くん大喜びよ!
そうそう、不動産部のイケメンのこと何かわかった?」

「え……」



千恵ちゃんには、あの日慧と再会したことをまだ話していない。

隠しているわけではなく、残業続きで話す機会がなかったせいだ。



閉店時間を迎えてはいるけれど、一応就業中なので、この内線で全てを話すこともできず。

……たとえ、周囲の人達が会議で離席中だとしても。

ぬかりない千恵ちゃんのことだから、マネージャーから見えない席で内線をかけてきていることは予想できるけれど。



「私が聞いた話だと、東京の本部から転勤してきたんだって。
すっごく仕事ができて、超イケメン、独身。
既に何人も不動産部の女子が告白したらしいけど、全員丁重に断られたらしいよ」

ドキン……。

告白、という言葉に私の心が敏感に反応する。

「……そう、なの……?」



脳裏を何年も前の慧の姿がよぎる。

自分に好意を抱いてくれている女の子達に分け隔てなく、傷付けない言い方で、やんわりと気持ちを拒絶していた慧。

波風をたてずにいた、慧。

そのお陰か私は付き合うことになっても、非難を受けることは殆どなかったけれど。

慧のことを諦められない女の子達、期待を捨てきれない女の子達の姿を目にして来た。