「お疲れ様、結奈」

温かみのある笑顔で慧が優しく話しかける。

「お、お疲れ様……」

先刻までの慌てた雰囲気が見間違いかと錯覚するくらい。

一変して余裕の雰囲気さえただよう慧に、ドキドキして緊張する。



「……良かった、電話して」

「え?」

「結奈に会えた」

サラッと前髪を額に落として、慧が私の顔を覗きこんだ。

その視線は蕩けそうなくらいに甘くて優しい。



瞬間。

私の心臓が壊れそうなくらいの音を立てる。

スマートフォンを握りしめる指に無意識に力が入る。



「……緊張してる?」

フワッと慧がスマートフォンを握りしめる私の手に自身の大きな手を重ねて。

その近い距離に慧の懐かしい香りが漂ってきて。

重なった手から慧の体温が伝わって。

もうそれだけで、私はどうしていいかわからなくなる。



「……そんな顔するなよ」

綺麗な顔に困ったような表情を浮かべる慧。



戸惑う私の耳元近くで。

「抱きしめたくなるから」

低く囁く慧の声が響いて。

私の顔は真っ赤に染まる。

「……今週の土曜日、迎えに来るよ」

有無を言わさない口調と見惚れるような笑顔で慧が言う。

「え、慧?」

「その時に話して。
住んでいる場所もわかったから、ここに迎えに来るよ」