彼と私の優先順位

相変わらず隙がなく、仕事帰りとは思えないくらいにシャキッとしたスーツ姿に、大人びた端正な顔立ちの奏くん。

対する私は、疲れた酷い顔をしている……筈。



「ううん、亜衣に話を聞いてもらって助かったから……」

「慧の話、だろ?」

「ちょっと、奏!
何で知ってるのよ?」

奏くんは高校生の頃と変わらない落ち着いた様子で返事をした。

「慧から連絡があったから。
亜衣と結奈が会うことがあったら、結奈の様子を教えてほしいって。
……何かされたの、慧に?」

奏くんの言葉に昼間の慧を思い出して、私は頬の火照りを感じる。

……奏くんはきっと知っているだろうに、その然り気無さには舌を巻く。




「何よ、それ。
慧が自分で電話してきたらいいんじゃないの?
相変わらず回りくどいというか、狡猾というか……」

憤慨する亜衣に苦笑しながら、奏くんは言った。

「慧は慧で遠慮してるんだって。
俺が口を出すことじゃないだろうけどさ……慧は本気だよ、結奈。
本気で結奈とやり直したいって思ってる。
俺にとっては慧も結奈も大事な友達だから、二人にとって一番いい道を考えて欲しいんだ。
結奈は自分を責めすぎずに、さ」

努めて軽い口調で話す奏くんは。

小さく頷く私に微笑んで、誰よりも憤慨している亜衣を促して帰っていった。