彼と私の優先順位

亜衣の言葉に思わず俯いた。

私が知らない時期の慧。

……何度、想像しただろう。

随分前の話だけれど、つい最近のことのように思えてしまうのは、今日、慧に再会したからだろうか。



「想像はつくと思うけど、慧は大学でも高校以上にモテていたからね。
まあ、あの外見だからねぇ、女子には王子様に見えたんじゃない?」

無意識に深刻な顔をしてしまっていた私を見て、亜衣はイタズラっぽく微笑んだ。



「……気になる?」

「……う、うん」

クスッと笑って亜衣が続ける。

「大丈夫。
私と奏が知っている限り、慧は大学時代には特定の彼女がいなかったわ。
告白は嵐のようにされていたけど」

亜衣の言葉を聞いて、どこかホッとしている自分に気付く。



「……結奈も慧がずっと好きだったでしょ?」

箸を置いて、亜衣が私を真っ直ぐに見つめる。



「私……」

「……わかってるよ。
結奈が慧への気持ちを封じようとしていたこと、思い出さないようにしていたこと。
思い出にしようと必死だったこと。
でも……無理だったでしょ?
……嫌いになって別れたわけじゃないから」

「……亜衣」

「何年、親友してると思っているの?
……部屋の鍵のキーホルダー……高校の鞄につけてた、慧とお揃いの熊でしょ?」

鋭い指摘に息を呑む。

「……忘れられないんじゃないの?
だからその熊、ずっと大事にしてきたんじゃないの?」