彼と私の優先順位

「……あ、うん……でも慧、私」

「……頼むから今、拒否はしないで。
話がしたいだけなんだ。
……もし、彼氏とか好きなヤツがいるとかそういう話も、その時にして」

懇願するような表情の慧に、私は何も言えず、ぎこちなく頷いた。

「……わかった。
連絡、する」

返事をした瞬間、パアッと慧は輝いた笑顔を浮かべた。




「……じゃ、俺行くわ」

そう言って、慧は私のためにドアを開けてくれて。

私が通った後、柔らかく微笑んで。

踵を返し、エレベーターホールに向かった。



身体にピッタリした細身のスーツを着こなす後ろ姿は大人の男性そのもので。

少し緩めのブレザーを、着崩して着用していた高校生の慧はもう何処にもいなくて。

……自分が置いてきぼりにされた気持ちになる。

久し振りに会った慧は、私のずっと先を歩いているようで。

纏う雰囲気も違っていた。



……あんなに強引だった?

……あんなに落ち着いていた?



自分を叱咤するように、私は小さく首を振って。

不動産部に来た本来の目的を果たすために受付に向かった。