彼と私の優先順位

「高校のクラスメイトなんです。
偶然再会したんですよ、今」

「えっ?
館本と紬木さん?
そうなの?
スゴイ偶然だね!」

私の方を見ながら、驚きつつも柔和な笑顔を浮かべる松園さん。

松園さんは子どもが大好きな二児のパパだ。



「そうなんです。
懐かしくて、つい話し込んでしまって」

魅力的な笑みを浮かべる慧。

「そっかぁ、その気持ちわかるよ。
じゃ、俺アポあるから行くわ」

ごく自然な様子で松園さんは不動産部のドアを開けて入っていく。

松園さんの背中を目で追う私に、慧が小声で話しかけた。



「……付き合ってたって言っても良かったんだけど」

耳元で囁かれる低い声。

私の肩がビクンッとあがる。

見上げた私の目に映る、何故か面白くなさそうな慧の表情。



フウッと息を吐いて。

慧は名刺を取り出した。

高校生の時には携帯していなかったもの。

……それは私達があの日から年を重ねたことを物語る。



「一応……職場の連絡先。
俺もプライベートの携帯番号とアドレスは変えていないから。
……結奈の都合のいい時間を連絡して。
……してくれなかったら俺からするから」

口調の強引さとは裏腹に、私の手にそっと優しく名刺をのせる。