彼と私の優先順位

幾度となく通りすぎていく人や電車のアナウンスを聞いて。

街灯の光を頼りにじっと目を凝らす。


粉々になりそうな、なけなしの希望を願うために、何度も星が瞬く空を見上げた。



時計台の時計が九時を示した時。

背後から慌ただしい足音が聞こえた。



「結奈!」

その声に。

反射的に振り返ると。

こちらに向かって駆けてくる慧がいた。



想いが先走って、涙が浮かびそうになる。

泣いちゃいけない。

泣くために慧を呼び出したわけじゃない。

寸前で思い返して、唇をギュッと噛む。



「……慧」

絞り出した声。

突っ立ったままの私の前で慧の足が止まる。

荒い息を吐きながら、慧が薄茶色の瞳を細めた。



「遅くなってごめん」

何か言いたそうに、私に向かって手を差し出そうとする。

「わ、私!
慧に話したいことがあるの」

下を向いて話し出した私に、慧の手がピタリと止まる。



「……何?」

「あ、あの、私。
慧が好きなの!」

急に呼び出してごめんね、お疲れ様、もすっ飛ばして。

いきなり放った一言に。



「……え」

慧が声を洩らした。

いつもシッカリしていて、飄々としている彼には珍しい声に。

ソロソロと視線を上げて慧の顔を見つめる。

そこには呆けたような慧の顔があった。