彼と私の優先順位

そもそも慧がここに来てくれる確証もない。

一方的にメールを送りつけたのだから。

期待しないよう自分に言い聞かせて、スマートフォンを鞄から取り出す。




新しいメッセージは届いていなかった。

液晶画面の時刻表示は七時半。

普段から残業の多い慧が普通に向かったとしても、もっと遅い時間になる筈。

来てくれること前提で考えている自分に小さく苦笑をして、スマートフォンを鞄に入れる。



時折、遊園地から少し離れた、住宅街に向かう道を通る人が怪訝な視線を私に向ける。

閉園時間をとうに過ぎた遊園地の門扉前に立ち続けているのだから、無理もないけれど。



……慧がもし来てくれたら。

一番に何を伝えよう?

私は何を伝えたい?

溝口さんとのことを疑ってごめん?

正直に話さなくてごめん?

週末に逃げてごめん?

電話に出なくてごめん?



ううん、違う。

そうじゃない。



全部、私が一番に伝えたい言葉ではない。

謝罪も大切だけれど。

それよりも私は。

慧に私の本心を伝えたい。


『好きです』と。