彼と私の優先順位

「ああ、いいわよ、大丈夫。
この契約書が収納してあるキャビネットから、他の人の検査書類を出さなきゃいけないから、一緒に片付けるわ。
そのままにしておいて」

「何かお手伝いできることはありますか?」

「ううん、もう充分よ。
フロアに戻って。
ありがとう」

そう言って美崎さんは微笑む。



私はお言葉に甘えて、美崎さんに失礼します、と声をかけてフロアに戻った。

早帰り日のせいかフロアに残っている人はまばらだった。



「あ、紬木。
お疲れ様、残高検査は終わった?」

笠井さんが私に声をかける。

「はい。
先程終わりました」

「今日は急ぎの案件はないんだろ?
早帰り日だし、片付けて帰りなよ」



笠井さんの言葉が今の私には有り難かったので、素直に頷く。

「ありがとうございます。
では……片付けます……」

そう言いながらも視線はしっかり壁に掛けられた時計に釘付けで。



いつもは出来るだけ片付けて退社する綴り物も、明日にまわそうと決める。

はやる気持ちを抑えながら明日の仕事内容をサッと確認する。

現物に預り証を付けて笠井さんに手渡す。



そのままの勢いでノートパソコンをシャットダウンして、机の中に収納、スタンパー類も片付けて机上を綺麗にする。

そのままの勢いでごみ箱を抱えてシュレッダーに向かった。