彼と私の優先順位

「だから嫌いなんですよ、先輩って。
何でそんなにお人好しなんですか」

言い切った後で溝口さんは俯いて、自嘲気味に話し出した。



「本当、意味わかんない……。
でも……先輩を見てると私ではダメだった理由がわかる気がします……」

小さく弱々しいその声は溝口さんをとても幼く見せた。



「……お人好しじゃないよ、私」

何を言っても言い訳にしか聞こえないような気がしたけれど、これだけは伝えたかった。

「溝口さんのほうが、本当はお人好しで優しいよ。
私にいつも正直に話してくれたもの。
今だって。
私のことを心配してくれてたんだよね?
自分の嫌いな相手にそんなこと、普通はしないよ」

私がそう言うと溝口さんはみるみる顔を赤らめた。



「もうっ。
……何、ライバルを褒めてるんですか。
慧くんなんか……先輩にあげますから!
私の価値がわからない慧くんなんていりませんし。
……いつか慧くん以上の人をつかまえますから!
先輩はさっさと慧くんをつかまえてきてください。
先輩とこじれてから、慧くん、馬鹿みたいに落ち込んでるんですから」

一気にそう言って、スタスタと溝口さんは出口に向かった。



そして、扉を出る直前に。

「……ごめんなさい」

小さくそう言った。

カチャリ、と細い音が金庫室に響いた。