彼と私の優先順位

微動だにしない私に溝口さんも俯く。

それから、ひとつ大きな溜め息を吐いた。



「……週末のことですけど。
誤解のないように言っておきます。
私、慧くんの部屋には行ってませんから。
そもそもそれより前に私、キッパリフラれてますし。
……私の兄が慧くんと同じマンションに住んでいるんです。
私は兄に会いに行って、たまたま、ロビーで慧くんに会っただけです。
フラれていても幼なじみに変わりはないので、一緒に駅まで行こうとしていただけですよ。
きっと先輩勘違いしてるだろうし、いい気味だって思っていましたけど」


何処か投げやりな口調の溝口さん。

彼女の言葉は素っ気なかったけれど、私には嬉しかった。

心の中でざわめきたっていたものが少しずつ落ち着いていく。



溝口さんは話したくなかっただろうと思う。

それでも話してくれた溝口さんに、感謝の気持ちが込み上げる。



「……ありがとう、溝口さん」

おずおずと告げると、溝口さんは驚いた顔をした。

「何、言ってるんですか?
私、先輩が別れちゃえばいいって思っていたんですよ!
それなのに、何でお礼なんてっ」

「……でも、今、教えてくれたでしょ?
……ありがとう」

溝口さんは呆れたように再び大きな息をひとつ吐いて。