彼と私の優先順位

「何が仕方ないのよ。
意味わかんない。
その子が諦めきれなくなって、別れてくれなかったらどうするの?」

相変わらず威圧的に話し続ける亜衣に慧が反論する。

「それは無い」

「何で言い切れるのよ?」

呆れたように言う亜衣を尻目に、慧が隣りに座る私に目を向ける。



学食はいつも通り、たくさんの生徒達で混雑していた。

食器が重なる音や話し声でザワザワした雰囲気はいつもと変わらない。



一限目が終わった休み時間。

慧からのメールが届いた。

昼休みまで、私は緊張しっぱなしで。

正直、受けた授業の内容は何一つ頭に入っていない。



奏くんは、お弁当を持ってぎこちなく出ていく私に、亜衣のことは任せて、と言って送り出してくれた。

私と亜衣は、クラスが変わっても大体いつも一緒に学食や中庭でお昼を食べている。

そこに不定期に奏くんと慧が加わっている。



いつもの学食の席には既に慧がいて。

一緒にお昼を、と周囲の女子生徒に誘われながら、やんわりと断っていた。

それもいつものことで。

慧の表情が強張っている以外はいつも通りだった。

私が慧の隣に座った時、亜衣と奏くんがやって来て、それから亜衣の猛攻撃が始まり……今に至っている。



「……好きな子がいるって言ってるから」

その瞬間。

慧がグイッと私の肩に腕を回して引き寄せた。

いきなりの出来事に私の顔がカアアッと赤くなる。



「……何、それ?」

呆れたような亜衣の声が響いて。

ドックン、ドックンと。

心臓が狂ったように走り出す。