彼と私の優先順位

「へぇ?
じゃあ、何よ。
親の転勤のせいで、東京へ引っ越しが決まった大事な幼なじみの女子に泣きつかれて、二週間だけ付き合うことにしたわけ?」

どこまでも不機嫌極まりない様子で、お弁当を頬張りながら亜衣が慧に言い放つ。

「……だから……そうだけど。
ってか、何で亜衣がここにいるわけ?
俺、昼休みに学食に来てってメールしたの、結奈だけなんだけど?」



面倒くさそうに、真向かいに座る亜衣を軽く睨みながら慧が文句を言う。

「そんなの当たり前でしょっ!
奏に聞き出したの!」

「……奏」

亜衣の隣りで、肉うどんを食べている奏くんを睨む慧。

「仕方ないだろ。
どのみち亜衣のことだから、結奈から聞き出すんだし」

箸を置いて、呑気にお茶を飲む奏くんを見て、慧は溜め息を吐いた。



「大体、慧が紛らわしいことするからでしょ?
最初から変に隠したりせずに経緯を説明してくれたら良かったのに。
結奈に嫌われても知らないよ?
この機会に結奈に彼氏ができたらどうすんの?」

「……それが嫌だから話したくなかったんだよ……」

険しい表情の慧に、亜衣は涼しい顔で続ける。

「大体、何で二週間の付き合いなのよ?」

「……諦めるからって。
思い出がほしいって言われたんだよ、仕方ないだろ。
幼稚園の頃からの付き合いだし、近所なんだし」