彼と私の優先順位

来た時と同様に、ニコリと微笑んで溝口さんは帰っていった。

丁寧なお辞儀までして。



破れそうなくらいの力で茶封筒を掴んで。

私はしばらく呆然としていた。

「……どうして……」

零れ落ちた言葉は誰に向けたものなのか。

私?

それとも慧?



本当は薄々気付いていた。

何が、と言うわけではないけれど。

女の勘、みたいなもので。



同期会の時の一瞬感じた視線や昨日の言動に。

もしかしたら、溝口さんは慧のことを好きなのかなと。



慧が説明してくれたような幼なじみ、というだけと信じたかった。

慧と溝口さんの認識が違うだけだと。



だけど。

溝口さんのあの口ぶりは。

溝口さんの、深い慧への想いを示していて。



……私にそのことをとやかくいう権利はない。



何よりもショックだったことは。

私が慧を傷付けた、ということ。

私に同じ思いをさせたいだけかも、と言った溝口さんの言葉が胸に痛い。



昨日。

いつかプロポーズをするから、と言ってくれた慧の優しい声と瞳を思い出す。

あの慧の言葉に嘘はないと信じている。



だけど。

どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。

どうして、ただ好きなだけではうまくいかないのだろう。