彼と私の優先順位

「えっ?
慧くん、話してなかったの?」



驚いた顔をして溝口さんは私に向き直る。

「私と慧くん、実家が近所なんです。
なので小さい頃からよく一緒に遊んでいて」

その言葉が私の胸に小さく刺さる。

「……昔の話だろ。
学年だって違ったし、高校からは学校も違うし。
殆ど会ってなかったし」

「それでも、よく遊んだじゃない。
カーテンを買いに行くなら言ってくれたら良かったのに。
相談にのったのに」

残念そうに話す溝口さんに。

「いや、真理に頼むことじゃないし。
じゃあ俺ら行くとこあるから。
結奈……行こう」

真理、と慧が溝口さんの名前を呼び捨てにしたことが引っかかった。




慧が私の手を引いて、溝口さんから引き離す。

「えっ、あっ、ちょっと……慧っ。
溝口さん、ま、またね」

ズンズン早足で歩く慧に、私は半ば引きずられるようについていく。

「け、慧っ、ちょっと待って!
速いよ!」



溝口さんから随分離れた場所で、慧はやっと止まってくれた。

黙り込む慧に。

私は自然な様子を装って、口を開く。

「溝口さんって……慧、昔からの知り合いだったんだね?
昨日、言ってくれたら良かったのに」