彼と私の優先順位

「ちゃんと話して」

「……何を?」

長い指で涙を拭ってくれる慧に尋ねる。



「結奈が俺のことで、俺のせいで抱えてしまっていたこと。
今、抱えてしまっていること全部」

「……え」

「……何、言われても俺は結奈を嫌いになったりしない。
ちゃんと受け止める」

苦渋の色を浮かべている慧の瞳は真剣で。

頬に触れる指は少しぎこちなかった。



「……今すぐじゃなくていいから、いつでもいいから。
遠慮せずに洗いざらい話してほしい」

「……わかった」

小さく返事をすると。

少しだけホッとしたように微笑む慧。



「出よっか?」

先刻とは打ってかわった明るい声で慧は伝票を持って立ち上がる。

私も頷いて立ち上がった。



支払う、と言ったけれど。

カーテン選んでもらったんだから、と慧に押しきられ。

お昼ご飯を結局ご馳走になってしまった。

「折角だから、ちょっと色々見てみる?」

慧が私の手を取って、指を絡める。

その仕草と伝わる体温が当たり前のようで。

私はまた泣きたくなった。



ねえ、慧。

私が今、考えていたこと。

知ってたの?



足踏みして迷っていること。

慧の予定に。

文句も言わずに合わせられる『彼女』ではなくては一緒にいられないんじゃないかと思う私の不安を。

今なら受け止めてくれるって、信じていい?



慧の綺麗な横顔を見上げながら、私は願った。