彼と私の優先順位

『約束があるから』

『今日は帰る』



幾度となく聞いた言葉。

その度に。

作り笑顔を張り付けていた私。

取り残されていた私。



過去の自分が走馬灯のようによぎって。

すぐに返事をすることができなかった。

黙りこんだ私に慧が呟く。



「……結奈はずっとこんな思いをしてたんだな」

まるで自分自身に向かって話しているような慧の声が耳に届く。

慧が私を真っ直ぐに見据えて続けた。



「ごめん、な。
今更過ぎるけど。
しんどい思いさせて。
……辛かったよな」



慧のごめん、に。

私の中の何かが崩れた。

胸が焼けつくようにヒリヒリ痛い。



「……結奈?」

慧が私を見て、ハッとした表情を浮かべる。



涙が止まらなかった。

「ご、ごめ……。
ビックリして……」



うまく言葉にできずにいる私に。

「……ごめんな」

慧が綺麗な目を伏せて、辛そうな表情で私に謝る。



「何で慧が謝るの……慧は悪くないよ……私が……」

「……そんなことない。
あの時、ガキだった俺は結奈の気持ちを考えずに傷つけた。
そのせいで結奈を失った。
……ずっと後悔し続けた。
もう後悔したくないし、結奈を失いたくない。
……結奈が欲しいんだ」

切実な表情で話す慧に。

私の胸が軋んだ。