「……気にしてくれたんだ?」

背中を向ける私の耳に慧の甘い声が響く。

クスクス笑いは続いていたけれど。



赤信号になり、車が停まる。

「な、何となく、何となく思っただけ」

「……ヤキモチ?」

「違っ……」

思わず振り向いた私にフワッと触れる慧の唇。

「大丈夫。
俺は結奈しか見てないから。
……結奈だからキスしたいし、抱きしめたい」



長い綺麗な指で私の髪を耳にかけながら、イタズラっ子みたいに笑う慧に。

私は何にも言えなくなる。

真っ赤な顔を隠すこともできず、黙って慧を見つめるしかできない。



「……そんな顔しないで。
襲うよ?」

「し、信号変わったよ!」

「ハイハイ。
これからも助手席は結奈しか乗せないよ」

楽しそうに笑いながら慧は再び前を向く。



バクバクと心臓が早鐘をうつ。

……こんな調子で私は一日慧と無事に過ごせるかな……。



慧の言葉が視線が私の胸をいっぱいにする。

この数年間。

慧への気持ちを私はよく無視できていたなあと驚くくらいに。

私の心も頭の中も。

苦しいくらいに。

私の全身が慧を大好きだと言っている。