彼と私の優先順位

「……間に合うといいけど」

苦笑しながら、奏くんは亜衣の後ろ姿を見送る。



今朝は梅雨の晴れ間なのか、雲の間から太陽が顔を出している。

快晴と言うわけではないけれど、太陽の光があって、昨日とは違う明るい雰囲気に少しホッとする。

気温も上がっていて、開け放した窓からは温い風が入ってくる。



「……慧から聞いたんでしょ、結奈?」

私のひとつ前の席に座って、小さな声で奏くんが話し出す。

「え?」

「昨日。
慧から連絡あったから。
結奈には話したって言ってたし。
慧にとって優先順位第一位は結奈だから」

「……」

「まあ、二週間くらいだし。
二週間経ったら彼女の気持ちもおさまるだろうし。
本当に付き合うわけじゃないからさ。
結奈が気にする必要ないよ」

「……え?」



奏くんが話していることの意味がわからなくて、私は眉をひそめて奏くんを見る。

「え?」

私の反応に奏くんがキョトンとする。



「慧から聞いたんだろ?
亜衣には俺から話すってことで……」

「……二週間くらい一緒に帰れないってことは」

「それだけ?」

コクンと頷く私に。

「マジ……何やってんだよ、アイツ。
肝心なこと一切話してねぇ……」

ハーッと大きく息を吐いて、困ったように頭を掻く奏くん。

ズボンのポケットからスマートフォンを取り出して、メールを作成し出した。