彼と私の優先順位

「ちょっと!
意味不明なんだけど!」



翌日。

けたたましく私のクラスに乗り込んできた亜衣。



「……何が」

窓際の席に座る、私の真横に立ちはだかる。

「これよ、これっ」

亜衣は持っていたスマートフォンの画面を私に見せる。

液晶画面には慧からのメールが表示されていた。



「明日から暫く一緒に帰れない、ごめん……って、そのままじゃないの?」

メールを読み上げた私をキッと睨む亜衣。

「そんなのわかってる!
帰れない理由は何なのよ」

「……慧に直接聞いたら?」

「日直で職員室!」

「あ、そうなんだ……」

じゃあ後でカーディガン返そう、と考えていると。



「亜衣、そんなに噛み付かない」

私の頭上から、ゆったりした奏くんの声が響く。

「もう、奏!
何でそんなに落ち着いてるのよ!
何なの、慧ってば。
結奈にも話していないなんて。
……まさか彼女とかできた?」

亜衣の大声に、クラス中の視線が集まる。



「……まさか」

奏くんは、チラリと私に配慮するかのような視線を送って微笑む。

「亜衣、今日一限移動じゃなかった?
家庭科室遠いよ?」

「だから……えっ、あっ、本当!
もうっ、この話はまた後でね!」

バタバタと名残惜しそうな表情をして、亜衣は出ていった。