彼と私の優先順位

この数年で慧は変わった、と。

再会して少ししか経っていない私ですら感じることがある。


見惚れる外見は相変わらずだけれど。

そこに大人の男性の雰囲気が加わった。

あの頃よりずっと落ち着いた物腰に柔らかい話し方。

そんな慧と比べて、私は成長したとは言い難い。



相手に変化と改善を求めてばかりで自分は変わっていないなんて。

それは情けなくて、全く魅力的ではない気がする。



そんな今の私に慧が惹かれる要素なんてあるのだろうか。

ヒンヤリとした板の間の廊下を歩いた先にある小さなお手洗いで。

そんなことを考えながら、衣類についた汚れを洗った。



鏡に映る私は何処と無く不安そうで。

私自身から見ても魅力的には思えない。

鏡の中の自分から目を逸らして、大きな溜め息をひとつ吐いた。



キイッ……と乾いた音を立てて扉を開ける。

お手洗いの外に一歩出て、皆がいる座敷に戻ろうとした時。

「あ、紬木」

背後の男性用のお手洗いから私を呼ぶ声がした。

クルッと振り返った私の瞳に映ったのは。

「柘植くん」