彼と私の優先順位

「彼氏?
今はいないわよ」

アッサリ返す巴ちゃんに。

「また別れたの……」

千恵ちゃんが苦笑する。

「だって、気が合わなかったんだもの。
仕方ないでしょ?
それより!
聞いたわよ!
不動産部に素敵な王子様が転勤してきたって!
結奈ちゃん達と同い年なんでしょ?
元々こっちが地元の人なんだよね?」

巴ちゃんの言葉にドキンと心臓が音をたてる。

「そうなの、一度だけ食堂で見かけたけど、スッゴいカッコ良かったよ!
女子社員に矢継ぎ早に話しかけられてた。
……それにしても巴ちゃん、よく知ってるね」

千恵ちゃんが驚いた表情で巴ちゃんを見る。



「私のイケメン情報網を甘くみないでって言いたいとこなんだけど。
実は不動産部に私の大学時代の後輩がいるの。
その子に聞いたのよ」

ペロッと舌を出してウインクする巴ちゃん。

「何だ、そうだったんだ」

「そう、その子……真理ちゃんって言うんだけど。
真理ちゃんも彼のファンらしくて。
色々教えてくれるのよ。
現在彼女はいない、とか」



彼女、というフレーズに私はガチャンと箸を取り落とす。

「ご、ごめんっ」

「やだ、ちょっと、大丈夫?
服は?」

千恵ちゃんがおしぼりを渡してくれる。

「あ、うん。
ちょっと、汚しちゃったみたいだから洗ってくるね」

和やかな雰囲気で皆が思い思いに話をしている中、私はそそくさと立ち上がる。

慧の話が出ただけでこんなに動揺するなんて……。

私、これからこんな調子で大丈夫なのかな……。



まだ千恵ちゃんに慧とのことを話していない。

慧が私の元彼氏だということも。

隠しているわけではないけれど、今の状況ではなかなか言い出しにくく、今日まで話せずにいた。