やっぱり授業に集中なんて出来なくて。
でも、あたしに出来ることって、ノートを見せることくらいで。
朝倉君のことを考えて、必死に黒板を写そうとする。
だけど……
「教科書三十ページに書いてあるように……」
その言葉を聞いてはっとした。
あたし……教科書を持っていない。
授業が変更になっていたことに気付かず、いつも通りの持ち物で来てしまったんだ。
一人であたふたするあたしに……
「あれ?三谷さん、教科書忘れたの?」
思いがけない声が聞こえた。
朝倉君?
いや、朝倉君の声なら、聞いてすぐに分かる。
胸がきゅんきゅんするから。
あたしに話しかけた人は……
ほんのり茶髪な今風の、爽やかな男の子だった。



