甘いときめきに酔っているあたしを、すばるくんの声が現実に引き戻す。
その声は弱々しいダサ倉の声とは違い、凛として心に響く。
「僕を馬鹿にするのは勝手です。
でも、つばさちゃんまで巻き添えにするのはおかしいですよね」
そんなすばるくんを、
「ダサ倉がキレた!」
「ダサ倉のくせに」
なんて女子たちは馬鹿にする。
馬鹿にされ続けるすばるくんを見ていられなくて。
「すばるくん!
あたしは大丈夫だから!
ちょっと散歩でもしてこよう!」
すばるくんの個性的なパーカーを掴んだあたしの手を、すばるくんはぎゅっと握る。
その、力強い男性の力で。
こんな時なのに、やっぱりドキドキしてしまうあたし。
すばるくん、いけないよ。
喧嘩売っておきながらドキドキさせるなんて、反則だ。



