パニックを起こすあたしに、さらに災難が降りかかる。
近くにいた学生が、面白いものを見ているような顔であたしたちに近付き……
あからさまな悪意を持って聞いてくる。
「お前ら、付き合ってるの?」
付き合ってる!?
動揺してしまって。
「そそそそんなんじゃないから!」
あたしは震える声で全否定し、
「だよな。その男、普通じゃないよな」
彼らは馬鹿にするように朝倉君を見て笑っていた。
あたしの反応は、彼らの思う壺だ。
朝倉君と付き合っていないのは事実だけど、朝倉君を貶したも同然だ。
本当は好きなのに。
付き合いたいなんて甘い幻想を抱いているのに。
あたし……なに朝倉君を傷つけているんだろう。
「ごっ……ごめん」
思わず朝倉君に謝ると、
「いえ」
朝倉君は首を横に振った。
そんな朝倉君は、ひどく小さく見えた。
朝倉君ともっと一緒にいたいのに、なにやってるんだろう、あたし。



