図書館に行っても、勉強なんて進まなかった。
それは、みんなが朝倉君を見て笑っているから……ではない。
朝倉君の仕草一つ一つが気になってしまって。
教科書を読んでいるその瞳であたしを見つめ、ペンを握るその手でギターを奏で、きゅっと閉じたその口であの歌を歌ったのかと思ったら、やたら意識してしまって。
朝倉君のことばかり考えていた。
よく見ると、やっぱり綺麗な顔してる。
睫毛も長いなぁ……
朝倉君に見惚れていると、ふっと顔を上げた朝倉君と視線がぶつかる。
赤かった顔が、さらに赤くなってしまった。
朝倉君はそのままじっとあたしを見て……
「三谷さん」
小声であたしを呼ぶ。
その声は、やっぱり凛としているSUと同じだが、どことなくなよなよしていた。
ダサ倉君の声だ。



